映画最高!(Cinema + Psycho)

映画に関するあれやこれやについて綴っていきます。映画の感想をメインに、映画にまつわるエピソード、そしてワンポイント心理学を紹介していきたいと思います。

第96回アカデミー賞 全部門受賞予想

映画ブログも復活させたことで、アカデミー賞予想もしていきたいと思います。

日本未公開だったり、配信のみの作品などもあって全ての作品をチェックしている訳ではありませんので、特に短編賞はトレーラーやあらすじだけで予想をしていますので、まあ当たるも八卦当たらぬも八卦というやつでしょうかね(予防線)。

ちなみに昨年の予想は、
本命的中(◎) ・・・ 12
的中(○、▲) ・・・ 9
ハズレ ・・・ 2

という結果でした。さて、今年はどうでしょうか?

 

 

作品賞候補

◎『オッペンハイマー
『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』
『マエストロ:その音楽と愛と』
『パスト ライブス/再会』
『関心領域(原題:The Zone of Interest)』
○『落下の解剖学』
『バービー』
『哀れなるものたち』
『American Fiction(原題)』
▲『The Holdovers(原題)』

 

候補作10本のうち、自分がすでに鑑賞しているのは、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』『落下の解剖学』『バービー』『哀れなるものたち』『American Fiction(原題)』の5本です。

本命は、『オッペンハイマー』。
クリストファー・ノーラン監督が原子爆弾の開発者ロバート・オッペンハイマーの姿を描いた作品です。
実在の人物を描いた硬派な作品というのはアカデミー賞を受賞しやすい傾向がありますし、ゴールデングローブ賞はじめ前哨戦の成績も良好です。
13部門の最多ノミネート、特に作品賞に直結する編集賞、脚色賞にもしっかりノミネートされているのは盤石と言ってよいでしょう。
しかもこのジャンルでアメリカでは3億ドル超のヒットを遂げていて、作品の質だけでなく興行収入の面でも評価されるに値する作品であると言えます。
日本では、バーベンハイマーのキャンペーンの一環で原子爆弾をネットミームにしてしまったことが問題視されて、一時は公開も危ぶまれていましたが、ようやく公開も決まったことですし逆風にはならないでしょう。

対抗は『落下の解剖学』。
カンヌ映画祭パルム・ドールを受賞した同作は、夫の不可解な転落死で容疑をかけられた妻が裁判の過程で夫婦関係だけでなく過去の確執や趣味嗜好まで明らかにされていくというサスペンスですが、映画の大半が法廷が舞台の会話劇で「オッペンハイマー」とは対照的な作品なだけに、「オッペンハイマー」を評価しない会員はこちらに投票する可能性があるかもしれません。
他部門でも監督賞、編集賞脚本賞、主演女優賞と重要な部門にしっかりノミネートされていますし、「オッペンハイマー」が逃すとしたら、本作が一番手になる可能性も考えられます。
気になる点としてはフランス映画なのに国際長編映画賞(2018年までは外国語映画賞)にノミネートされていないことでしょうか。
そもそも英語以外の言語を主体とする作品が作品賞を受賞した例はここ20年で「パラサイト 半地下の家族」しかありません(「アーティスト」も製作はフランスですが、実質サイレント映画ということで)。「パラサイト 半地下の家族」は国際長編映画賞もしっかり受賞していたので、それを考えると作品賞受賞までの勢いはないかもしれません。

3番手は『The Holdovers(原題)』。
アレクサンダー・ペイン監督によるヒューマンドラマです。
アカデミー賞の作品賞は、「コーダ あいのうた」のようにほのぼのとした佳作に賞が送られる傾向もたまにあるので、大作と批評家好みの作品の間で本作が戴冠する可能性もあるかもしれません。
ただ、編集賞脚本賞はノミネートされていますが、監督賞の候補からハズレているのも気がかりです。

それ以外の作品だと、『バービー』は2023年の最大ヒット作で誰もが知っているバービー人形を題材に男性優位社会をコミカルに批判しているというテーマもしっかりした作品ですが、監督賞、編集賞、そして主演女優賞もノミネートされていないことから、批評家受けという点では1歩下がってしまっている印象です。
『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』も「オッペンハイマー」に次ぐ10部門ノミネートですが、アメリカの負の歴史を描いた作品ということ、脚色賞にノミネートされていないことはネックになりそうです。
『哀れなるものたち』も有力視されていましたがヨルゴス・ランティモス監督の世界観が万人受けするタイプには見えずに票が集まりづらい印象があり、本作で大いに評価されるのが主演女優賞のエマ・ストーンではないかとも考えられます。
『マエストロ:その音楽と愛と』もレナード・バーンスタインの伝記ドラマということで実在の人物を描いていますが、それなら「オッペンハイマー」という印象があります。

ということで大本命『オッペンハイマー』がそのまま受賞するのではないかというのが予想になります。

 

監督賞候補

ジュスティーヌ・トリエ 『落下の解剖学』
ヨルゴス・ランティモス 『哀れなるものたち』
クリストファー・ノーラン 『オッペンハイマー
マーティン・スコセッシ 『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』
ジョナサン・グレイザー 『関心領域(原題:The Zone of Interest)』

 

作品賞が『オッペンハイマー』であれば、監督賞もクリストファー・ノーランで揺るがないでしょう。
稀代のヒットメーカーが伝記ドラマでも3億超のヒットを遂げる作品に仕上げたということは大いに評価されるでしょう。過去に「ダンケルク」でノミネート済で実績も十分と言えます。
ただ、「ダークナイト」「インセプション」「インターステラー」「TENET」ともっと評価されていてもおかしくないという印象もあって、実はアカデミー会員にはそれほど好かれていないのではという邪推もできなくはないですが、作品の勢いそのままに受賞までこぎつけるでしょう。

 

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主演女優賞候補

◎リリー・グラッドストーン 『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』
キャリー・マリガン 『マエストロ:その音楽と愛と』
▲ザンドラ・ヒュラー 『落下の解剖学』
アネット・ベニング  『ナイアド ~その決意は海を越える~』
エマ・ストーン 『哀れなるものたち』

 

ここは前哨戦では一騎打ちといった様相でした。
本命は『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』のリリー・グラッドストーン
先住民のオセージ族として毅然とした態度を貫く女性を演じきったところは大いに評価されるでしょう。
またノミネート数こそ多い本作ですが実際に受賞できる可能性で考えると難しい部門が多く、ここを逃すと無冠に終わってしまう可能性も考えられるので、本作の支持者はここに票が集まるのではないかとも考えられます。とかく多様性がうたわれる時代で、アメリカン・インディアンの血を持つ彼女が受賞するというのは願ったり叶ったりな部分もあると言えます。
ネックと言えば、出演時間こそ長いですが実質助演という立ち位置な印象もあることでしょうか。

対抗は『哀れなるものたち』のエマ・ストーン
赤子の脳を移植された女性という難役を文字通り体当たりで演じきっています。
作品そのものを引っ張っているという点では、リリー・グラッドストーンよりも優位と言えるでしょう。
そして『哀れなるものたち』もノミネート数の割に受賞できそうな部門が少ない印象があるので、同作の支持者の票がこの部門に集中する可能性はあります。
ただ、「ラ・ラ・ランド」ですでに受賞済で助演女優賞も2度ノミネート経験もあり、今後も大いに活躍が期待できるだけに、フレッシュさという点でリリー・グラッドストーンに劣るかもしれません。

『落下の解剖学』のザンドラ・ヒュラーが3番手。
作品の評価の高さもありますが、それを支えているのはまさに本作の中心に位置している彼女です。
また、同じく作品賞にノミネートされている『関心領域(原題:The Zone of Interest)』にも出演しているとのことで、総合的に評価が高まっている可能性はあります。
ただ、本作を鑑賞して、彼女以上に演技という面では、息子役のミロ・マシャド・グラネール(と飼い犬役のメッシ)の方が印象的だったように思います。『落下の解剖学』のアカデミー会員の評価も未知数なだけに3番手とします。

 


主演男優賞候補

ブラッドリー・クーパー 『マエストロ:その音楽と愛と』
キリアン・マーフィー  『オッペンハイマー
コールマン・ドミンゴ 『ラスティン:ワシントンの「あの日」を作った男』
ポール・ジアマッティ 『The Holdovers(原題)』
ジェフリー・ライト 『American Fiction(原題)』

 

本命は『The Holdovers(原題)』のポール・ジアマッティ
アレクサンダー・ペイン監督作は「アバウト・シュミット」「ファミリー・ツリー」など人間にスポットを当てたドラマ作品なので、作品が評価されるときは常にキャストも評価されている印象です。名バイプレイヤーが「サイドウェイ」以来のコンビとなるアレクサンダー・ペイン監督の作品で受賞となればドラマ性も十分ではないでしょうか。
アカデミー賞では2005年に「シンデレラマン」で助演男優賞にノミネートされて以来の2回目のノミネート。嫌われ者の教師という役どころも追い風になるのではないでしょうか。

対抗は『オッペンハイマー』のキリアン・マーフィー。
こちらも作品の勢い、実在の人物を熱演など評価を後押しするポイントはたくさんあります。
ただし、クリストファー・ノーラン監督は、アレクサンダー・ペイン監督とは対照的にキャストがノミネートされにくい印象があります(例外は「ダークナイト」のヒース・レジャーぐらい)。またキリアン・マーフィーも初ノミネートということで、キャリアの部分も考えてポール・ジアマッティの方を有力と見ます。

ブラッドリー・クーパーも実在の人物を演じている、5度目のノミネートでこれまで受賞なしと実績、評価とも申し分ないのですが、作品の勢いという点で上記の2人に劣っている印象です。

 

助演女優賞候補

エミリー・ブラント 『オッペンハイマー
ダニエル・ブルックス 『カラーパープル
ジョディ・フォスター  『ナイアド ~その決意は海を越える~』
アメリカ・フェレラ 『バービー』
◎ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ 『The Holdovers(原題)』

 

ここは『The Holdovers(原題)』のダヴァイン・ジョイ・ランドルフで揺るがないでしょう。
前哨戦での圧倒的な強さ、ベトナム戦争で息子を亡くした母親という役どころ、実質3人の主演のうちの1人という点、どこをとっても死角が見当たりません。

個人的には『カラーパープル』のダニエル・ブルックスも映画を見た誰もが持っていかれる魅力的な役どころなので応援したいところですが、作品の勢いを考えても逆転はないでしょう。

オッペンハイマー』のエミリー・ブラントオッペンハイマーの妻役という実在の人物を演じていて有力候補ではありますが、クリストファー・ノーラン作品のキャスト評価という点でどうでしょうか。
作品の全体評価は「オッペンハイマー」、キャストは「The Holdovers」と考えると、やはりダヴァイン・ジョイ・ランドルフが受賞に最も近いでしょう。


助演男優賞候補

スターリング・K・ブラウン 『American Fiction(原題)』
ロバート・デ・ニーロ 『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』
ロバート・ダウニー・Jr. 『オッペンハイマー
ライアン・ゴズリング 『バービー』
マーク・ラファロ 『哀れなるものたち』

 

オッペンハイマー』のキャストで最も受賞の可能性が高いのがこの部門のロバート・ダウニー・Jr.。
こちらも実在の人物を演じており、主人公とは対立する立場ということで映画の中でも重要な役どころと考えられます。
「チャーリー」でチャールズ・チャップリンに扮し主演男優賞にノミネートされるもスキャンダルでキャリアが低迷、そこからのカムバックを果たし、アイアンマンとして地球を救い、またオスカーの晴れ舞台に戻ってきたというのはいかにも好まれそうなストーリーで、昨年のブレンダン・フレイザーキー・ホイ・クァンに通じるものがあります。

対抗は『バービー』のライアン・ゴズリングか。
女性優位の「バービー」の世界から抜け出してアイデンティティーを追い求める姿は主演のバービーを食っているほどの印象はありました。
ただ、作品の評価を加味するとやはり前者には及ばない印象です。

 


脚本賞候補

サミー・バーチ&アレックス・メカニク 『May December(原題)』
○デイヴィッド・ヘミンソン 『The Holdovers(原題)』
ブラッドリー・クーパージョシュ・シンガー 『マエストロ:その音楽と愛と』
セリーヌ・ソン 『パスト ライブス/再会』
◎ジュスティーヌ・トリエ&アルチュール・アラリ 『落下の解剖学』

 

本命は、『落下の解剖学』。
会話劇が中心ということもあり、圧倒的なセリフの多さとそれが支えている物語ということで、本作で最も評価しやすいのはこの部門なのではないでしょうか。
この部門は作品賞とは別個に評価される印象があって、「プロミシング・ヤング・ウーマン」や「ゲット・アウト」のようにとにかくストーリーとしてのインパクトが強い作品が受賞するイメージがありますが、今年の候補を見るとそういった変化球のような作品はないように感じるので、『落下の解剖学』を本命とします。

対抗は、『The Holdovers(原題)』。
3人が疑似家族のような関係を築いていくというストーリーは支持されやすいと考えます。
前哨戦から『パスト ライブス/再会』が受賞しても何らおかしくなく、3つ巴といった様相かと思いますが、すでに見た作品の方が素直に評価しやすいというのが正直なところです。

 


脚色賞候補

○『オッペンハイマー
『関心領域』
『バービー』
『哀れなるものたち』
◎『American Fiction(原題)』 

 

ここは『American Fiction(原題)』を本命にします。
売れない黒人作家が逆ギレ気味にコンプライアンス完全無視の小説を書いたらそれが思いの外話題になる、という軽妙さもありながら皮肉も利いているということで、本作で最も評価されやすい、受賞しやすい部門ではないかと考えます。

対抗はやはり強いであろう『オッペンハイマー』。
作品の力が一枚抜けているのであればここもあっさり受賞があってもおかしくはないです。
他の候補作にも受賞の目がないわけではないので大混戦の部門と言えるでしょう。


編集賞候補

◎『オッペンハイマー
『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』
『落下の解剖学』
『哀れなるものたち』
『The Holdovers(原題)』

 

観客は編集後の作品を目にするので、作品賞に直結しやすいとも言える部門です。
とはいえそのまま両方とも受賞となっているわけではないのが面白いところで、昨年こそ「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」が作品賞と同時受賞していますが、それ以前の同時受賞は2012年の「アルゴ」まで遡ります。

作品賞の作品を差し置いて受賞した例は、やはり編集にインパクトがある作品だったように思います。
とはいえ、今年はそこまで超絶の編集という印象の作品がなかったと思いますので素直に『オッペンハイマー』を本命とします。

 


美術賞候補

オッペンハイマー
『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』
『ナポレオン』
◎『バービー』
○『哀れなるものたち』

 

本命は前哨戦でも圧倒的だった『バービー』。
やはりあの「バービー」の世界観を完璧に再現しているのは圧巻でしょう。
対抗は、やはり美術が作品のイメージを決定づけている『哀れなるものたち』。

 

音響賞候補

『ザ・クリエイター/創造者』
○『マエストロ:その音楽と愛と』
『関心領域』
◎『オッペンハイマー
ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』

 

この部門は、音楽系の映画、戦争映画などが強い印象です。
本命はやはり作品の力を考えて『オッペンハイマー』。
爆発シーンなども多く音響が重要になってきますし、クリストファー・ノーラン作品は「インセプション」「ダンケルク」でも受賞済で技術系の部門ではかなり信頼性が高いと思われます。
対抗は音楽系映画の『マエストロ:その音楽と愛と』。


撮影賞候補

◎『オッペンハイマー
『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』
『マエストロ:その音楽と愛と』
『哀れなるものたち』
『伯爵』

 

この部門は、戦争映画、SF映画などのスペクタクル感の強い映画が受賞しやすい傾向があります。
であれば、本命『オッペンハイマー』で揺るがないでしょう。
映像のインパクトがすごいクリストファー・ノーラン作品を支えているのはこの部門のホイテ・ヴァン・ホイテマといっても過言ではありません。


視覚効果賞候補

○『ザ・クリエイター/創造者 』
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』
◎『ゴジラ-1.0』
ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』
『ナポレオン』

 

ここは一騎打ちでしょう。
本命は、『ゴジラ-1.0』。
前哨戦でこそ一歩劣っている印象はありますが、ノミネート発表のときの歓声の大きさからして逆転の可能性は大いにあります。
スピルバーグはじめハリウッドでも著名な監督、映画製作者に影響を与えた「ゴジラ」の最新作が受賞となれば、会場中がスタンディング・オベーションすることは間違いないでしょう。
対抗は前哨戦で『ザ・クリエイター/創造者 』。こちらも素晴らしい作品ではありますが、ギャレス・エドワーズもまたゴジラの影響を受け、ハリウッドでもゴジラ作品を作っているので、それらの功績も考えるとやはり、『ゴジラ-1.0』の席巻を願ってやみません。

 


メイクアップ&ヘアスタイリング賞候補

オッペンハイマー
○『マエストロ:その音楽と愛と』
『Golda(原題)』
◎『哀れなるものたち』
『雪山の絆』

 

主演女優賞のエマ・ストーンが盤石ではないとしたら、『哀れなるものたち』が受賞しやすい部門はここではないでしょうか。ベラを生み出したゴドウィンの造形はまさにメイクアップの力によるところが大きいです。
対抗は『マエストロ:その音楽と愛と』。
レナード・バーンスタインをスクリーンに蘇らせたメイクが評価されるかが鍵となりますが、カズ・ヒロは個人名義としてはすでに2度受賞しており、今回も受賞すると3度目の快挙を達成することになります。


衣裳デザイン賞候補

オッペンハイマー
『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』
『ナポレオン』
◎『バービー』
○『哀れなるものたち』

 

ここも『バービー』と『哀れなるものたち』の一騎打ちでしょう。
作品の力や人気度、衣装のバラエティーを考えるとやはり『バービー』の方が受賞に近いかもしれません。
『哀れなるものたち』のベラの衣装もかなり個性的でインパクトはあるのですが、基本の系統が似ていてバラエティーの部分で負けている印象です。


作曲賞候補

○ルドウィグ・ゴランソン 『オッペンハイマー
ジャースキン・フェンドリックス 『哀れなるものたち』
◎ロビー・ロバートソン 『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』
ラウラ・キャップマン 『American Fiction(原題)』
ジョン・ウィリアムス 『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』 

 

ここは『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』のロビー・ロバートソンを本命に。
ザ・バンドのギタリストとして知られていますがマーティン・スコセッシ監督の映画音楽も度々担当してます。
そして昨年80歳で亡くなってしまい、映画のスコアとしては本作が最後の作品となります。
自身のルーツでもあるアメリカン・インディアンにまつわる作品で、楽曲も映画のイメージとマッチしており、受賞にふさわしいのではないかと言えます

とはいえ、チャドウィック・ボーズマンが逝去したときも受賞確実と言われながら逃した前例もあり、いわゆる追悼受賞みたいなものはないと考えたとき、やはり『オッペンハイマー』のルドウィグ・ゴランソンになるのではないでしょうか。こちらは重厚なクラシックサウンドになっています。「ブラックパンサー」ですでに受賞経験があることが吉と出るか凶と出るかでしょう。

 


歌曲賞

“The Fire Inside” —『Flamin’Hot(原題)』
◎“I’m Just Ken” — 『バービー』 Music & Lyrics by: Mark Ronson, Andrew Wyatt
“It Never Away” —『American Symphony』
“Wahzhazhe(A Song For My People) —『キラーズ・オブ・ザ・フラワー・ムーン』
○“What Was I Made For?” — 『バービー』 Music & Lyrics by: Billie Eilish O’Connell, Finneas O’Connell

 

ここは『バービー』の楽曲同士の一騎打ちが濃厚でしょう。
主題歌か挿入歌かということになるのですが、挿入歌の“I’m Just Ken”を本命にします。
作中でもっともインパクトのあった曲でしたし、ライアン・ゴズリングが自ら歌っているというのもポイントが高いのではないでしょうか。
主題歌もビリー・アイリッシュの良曲ですが、受賞歴もあるのでここはライアン・ゴズリングに花を添えるということで。

 


国際長編映画賞候補

『The Teachers' Lounge』(ドイツ)
○『Io Capitano』(イタリア)
『PERFECT DAYS』(日本)
『雪山の絆』(スペイン)
◎『関心領域』(イギリス) 

 

本命は候補作の中で唯一作品賞にもノミネートされている『関心領域』。
アウシュヴィッツ強制収容所の隣で幸せに暮らす所長の家族という壁を隔てた2つのあまりにも対照的な日々を描くということで、数あるホロコーストモノにおいても異色の作品でしょう。
ヨーロッパへ密入国を目指すセネガルの若者2人の過酷な道中を描く『Io Capitano』が対抗。
『PERFECT DAYS』も素晴らしい作品だけに応援したいところだけど、日常系の映画で受賞は難しいかもしれません。


長編アニメーション映画賞候補

『マイ・エレメント』
○『スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース』
『ニモーナ』
『Robot Dreams(原題)』
◎『君たちはどう生きるか

 

本命はスタジオジブリ宮崎駿監督のカムバック作品『君たちはどう生きるか』。
個人的には同監督作においてすごい好きな作品というわけではないのですが、日本よりも海外受けの方が良さそうな内容、時代背景、映像ですし、今回の候補作の中では飛び抜けたイマジネーションを誇る作品だと思います。
対抗は『スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース』。作品の力はありますが、やはりその衝撃は前作で知ってしまっているので、それ以上のインパクトはなかったかなという気がします。

 

短編アニメーション賞候補

◎『Letter to A Pig(原題)』
○『Ninety - Five Senses(原題)』
『Our Uniform(原題)』
『Pachyderme(原題)』
『War Is Over! Inspired by The Music of John & Yoko』

 

トレーラーを見た感じだと、手書き風の絵柄に命を吹き込んだ2作のインパクトが強い。
本命は、『Letter to A Pig(原題)』。ホロコーストの生き残りの老人から聞いた話を元にした少女の内なる冒険という内容で、各映画祭での受賞も多いというのも頷ける、テーマも表現も印象的な作品でした。
対抗は、『Ninety - Five Senses(原題)』。これまた手書き風の絵柄が印象的です。


長編ドキュメンタリー賞候補

『Bobi Wine : The People's President』
○『The Eternal Memory』
◎『Four Daughters』
『To Kill A Tiger
『20 Days in Mariupol』

 

ウガンダ独裁政権に挑む歌手、アルツハイマー病になった夫と支える妻、ISISに参加した娘の代わりを俳優が演じる疑似家族モノ、インドでのレイプ被害者の父、ロシアの侵攻を受けたマリウポリの実録モノと国際的な問題をテーマにした作品が多いですが、本命は『Four Daughters』。ISIS問題を題材に失われた家族の代わりを役者が演じるというノンフィクションとフィクションの融合のような作品で、インパクトならばダントツです。
対抗は『The Eternal Memory』。現代病として看過できないアルツハイマー病とその患者に寄り添う姿は万人の心を打つに違いないでしょう。


短編ドキュメンタリー賞候補

『The ABCs Of Book Bannning』
○『The Barber of Little Rock』
◎『Island in Between』
『The Last Repair Shop』
『Nai Nai and Wài Pó』

 

検閲、人種問題、中国台湾問題、無料の楽器修理、2人のおばあちゃんとこれまた捉えているものがバラエティーに富んでいます。
本命は中国台湾問題を捉えた『Island in Between』。台湾の観光地ながら中国本土からほど近い場所で中国本土との緊張高まる台湾の最前線でもある場所を、ときに叙情的に映し出しています。
対抗は黒人の理髪師の目線で人種問題を捉えている『The Barber of Little Rock』。


短編映画賞候補

『The After(原題)』
『Invincible(原題)』
『Knight of Fortune(原題)』
『Red, White And Blue(原題)』
◎『ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語』

 

ここは「チャーリーとチョコレート工場」の原作ロアルド・ダールの小説を元に「グランド・ブダペスト・ホテル」のウェス・アンダーソン監督が映画化した『ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語』でしょう。ベネディクト・カンバーバッチレイフ・ファインズ他出演陣も豪華すぎます。

 

 


ということで全部門予想をしてみました。
予想通りならば、『オッペンハイマー』が6部門受賞で最多となり、『バービー』が3部門、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』、『The Holdovers(原題)』が2部門と以上の4作品が複数部門での受賞ということになります。
昨年の「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」こそ7部門受賞していますが、近年は1つの作品が10部門以上を独占するような総ナメ状態になることが少ないですし、昨今の多様性にも配慮した良い予想になったのではないでしょうか(自画自賛)。

現地日時で3月10日に授賞式が開催されます。
結果を、そして受賞作の公開を楽しみに待ちましょう!