映画最高!(Cinema + Psycho)

映画に関するあれやこれやについて綴っていきます。映画の感想をメインに、映画にまつわるエピソード、そしてワンポイント心理学を紹介していきたいと思います。

映画「変な家」感想 ―ホラー演出の代償に失われたものたち―

 

「変な家」概要と感想

 ウェブライター、YouTuberの雨穴のYouTube動画、およびそれを元にした小説の映画化。オカルト系YouTuberがある一軒家の間取り図に違和感を抱いたことで巻き込まれる予想だにしない恐怖を描く。
監督は、「エイプリルフールズ」「ミックス。」の石川淳一。出演は、間宮祥太朗佐藤二朗川栄李奈、DJ松永、瀧本美織斉藤由貴高嶋政伸石坂浩二、他。

自分のX(旧Twitter)に投稿した一言感想はこちら。

 

 自分が「変な家」を知ったのはYouTubeの動画が最初でした。その後、オモコロでWeb記事として上がっているのを見ています。小説と漫画化もされているようですが、その両者は未読です。

 映画では、オカルト系YouTuberの雨宮(間宮祥太朗)が、マネージャー(DJ松永)が購入を考えている一軒家の間取りが気になっていると相談半分、ネタ提供半分のような申し出を受けます。その間取り図をミステリー愛好家の設計士・栗原(佐藤二朗)に見せたところ、その間取り図から読み取れる様々な可能性を口にします。その時は単なる妄想ということで片付けられましたが、程なくしてこの"変な家"の近くの雑木林から死体が発見されます。栗原の解釈内容とこの死体発見のニュースを織り込んだ動画を雨宮がアップすると、それを見た宮江柚希(川栄李奈)という女性から、その家に心当たりがあると連絡があり・・・。

 オリジナルのYouTube動画、Web記事では、上記の死体発見のニュースのところまでが内容となっています。その後の展開は一応原作小説から持ってきているようですが、原作を読んだ人からはだいぶ異なっていることが指摘されているようです。自分は原作を読んでいないのでその相違の部分については分かりません。ただオリジナルのYouTube動画では、雨穴さん自身が設計士と電話でやり取りをするのとこの変な家の間取り図が映像として映るぐらいで、設計士は電話の音声のみで、しかもボイスチェンジャーで声を変えられています。こうした制限された情報下であるからこそ、想像や妄想が膨らみ、本当かどうかわからないという不確定さが恐怖感をもたらすことにつながっています。
 映画によって視覚化されることで、そうした情報が少ないことによる恐怖感の増幅はなくなってしまうのですが、より視覚的で直接的な恐怖にしようとしたのでしょうか、一定の脅かし要素はありますが、それによって本作の間取り図をモチーフとするホラー、ミステリーという部分が大いに弱まってしまった印象でした。次の章では、ネタバレ全開でそのあたりの残念な部分について書いていきたいと思います。映画の内容、結末に触れていますので、これから映画をご覧になる予定の方はご遠慮ください。

 

 

ホラー演出のために犠牲になったものたち(ネタバレ全開要注意!)

 映画では上記のあらすじに接続して、雨宮に連絡をしてきた宮江柚希が、雑木林で発見された死体・宮江恭一の妻であると主張します。恭一は人と会ってくると出かけたきり行方不明になっていたので、この家を訪ねたのではないかと。雨宮は宮江柚希と共に、この間取り図の"変な家"に乗り込むことになります。部屋は持ち主を失ってだいぶ荒れた状態になっていました。そして間取り図の通りの構造をしており、件の子供部屋は2階の中央に位置していました。2重扉を抜けて子供部屋に入ると、床中びっしりと爪で引っ掻いたような傷に覆われていました。そして部屋の隅にあった棚を動かしてみるとそこには下の階に通じる隠し通路が見つかります。その先には何が・・・と、その時!雨宮の携帯に栗原から電話が入り、衝撃の事実が!!!この衝撃はぜひ劇場で味わってもらいたいので、ここでは伏せておきます。正直、この映画中で一番怖い場面かもしれません。

 たまらず家を飛び出した雨宮は、近所の住人から、この家には片渕という夫婦と小さい子供が住んでいたこと、そして、その子供とは別の少年がいてスマホで撮影したことを告げられます。その写真をパソコンでアップにすると、別の少年は奇妙なお面をつけていることがわかります。そこに柚希がやってきて、自分は本当はこの変な家に住んでいた片渕綾乃の妹で、姉を探しているのだということを言ってきます。だったらなんで変な家で雨宮を驚かしたし?
 柚希の姉はあるとき突然家からいなくなり、母親に聞いても「家の子ではなくなった。」としか教えられませんでした。しばらくして姉と連絡が取れたときは結婚して子供もいる状態でしたが、詳細はわからないまま再び音信不通になっていたのでした。
 雨宮が動画の編集をしていると突然停電して謎の女に襲われます。胸騒ぎのした栗原がやってくると、マネージャーも部屋の前で同じ女に襲われていたことが分かります。このときのマネージャーことDJ松永のデスマスクはなかなか見応えあります。マネージャーは「マジもんじゃねえか!」と捨て台詞を吐いてこの1件から手を引きます。
 雨宮は柚希から、姉夫婦が前に住んでいた埼玉の家の間取り図を見せてもらい、そこもやはり子供部屋を隠すような構造をしていることに気がつきます。雨宮、柚希、栗原は、柚希の母親・喜江(斉藤由貴)の元を訪ねます。そこで、父親の残した意味不明の記述の並ぶノートを見せられ、父親は交通事故ではなく本家とのしがらみによって亡くなったことを告げられます。喜江の態度に違和感を感じた栗原は一人で家に戻り、押し入れから幻覚剤と怪しげなお面を発見します。雨宮とマネージャーを襲ったのは喜江であることが分かります。喜江が雨宮の家やマネージャーの存在をどのように知ったかは定かではありません。
 片渕本家にやってきた三人は、この本家でも過去に失踪事件が起こっており、東京や埼玉の変な家と同様に、子供を利用した殺人を行うための部屋ではないかと邪推をします。本家は客間が4つ繋がってますが、ところどころ引き戸が開かないような構造になっていて、これこそ殺人のための構造だと確信します。単に建付けが悪いわけではありません。その矢先、片渕本家の人間にみつかり、応接間に招待されます。片渕家の現当主・重治(石坂浩二)、妻の文乃(根岸季衣)、そして親族の清次(高嶋政伸)。それに柚希の姉・綾乃(瀧本美織)とその夫の慶太が出迎えます。姉夫婦の様子もおかしい(実は打たれています、幻覚剤)と思った矢先、雨宮たちは急激な眠気に襲われます。気がつくと片渕本家の面々の姿が消えていました。栗原は、喜江から聞いた片渕本家の呪いの話を雨宮と柚希に伝えます。

片渕本家の呪いと左手供養
 当時の片渕本家の当主が、女中の潮(うしお)という女性を妾にします。やがて当主の子供を身ごもるのですが、そのことで潮は正妻から疎まれ激しい折檻を受けます。子供は流産してしまい、座敷牢に幽閉された潮は錯乱し、自分の左手を切り落として自害します。その後、片渕家では生まれながらにして左手がない子供が生まれます。霊媒師によるとこれは潮の呪いであり、解くためには"左手供養"が必要だと言います。左手供養とは、片渕家の血を引く男児を光を当てることなく育て、10歳になったら誰かの左手を切り落とし、その左手を捧げるのを3年続けて行う供養です。

 雨宮たちは、廊下にある巨大な仏壇の裏側に空間があることに気がつきます。そこには隠し通路があり、一つは客間に繋がっていました。もう一方の通路を行くと、そこは洞窟のようになっており、潮の監禁されていた座敷牢と潮を祀る祭壇のようなものがありました。そこで雨宮たちは清次に襲われ意識を失います。気がつくと綾乃と慶太も一緒におり、2人の馴れ初めを話してくれます。高校時代いじめられっ子だった慶太は、転校生の綾乃に助けられます。綾乃なしでは生きられなくなった慶太は婿入りという形で片渕家に入ります。そこで、桃弥という少年を世話するように言われます。この桃弥こそ、片渕本家の血を次ぐもので、10歳になったら左手供養の儀式を行わなければならないのです。桃弥の親は誰かは分かりませんがとにかくそういうことです。桃弥にすっかり情が移った綾乃と慶太は、左手供養を続けるという条件で、本家の家から出て、埼玉の変な家で暮らし始めます。言い伝え通り光を当ててはいけないということで、子供部屋が外部と接さない作りだったんですね。本家からの移動の際に光は当たらんのかとか野暮なことは言ってはいけません。子供を部屋に閉じ込めながらも新婚の若い男女が2人、何も起こらないはずがなく、2人は浩人という子宝に恵まれます。それで家が手狭になったので東京の変な家へと引っ越したわけです。桃弥に左手供養をさせるのをためらった綾乃と慶太は、都合よく心臓発作か何かで死んた恭一(東京の変な家そばの雑木林で見つかった死体です、念のため)の左手を切断し、これを本家に送ります。しかし、これが桃弥によるものではないと気づかれたのか、綾乃と慶太は本家に連れ戻されます。そのときに浩人を人質にされ、今度こそ左手供養を行うことを強要されています(今ココ)。


 と一通り説明が終わったところで、雨宮は清次に体を抑えられ、そこには斧を手にした桃弥が!雨宮の左手が切り落とされると思いきや、桃弥にためらいの色が見て取れます。そりゃたかだか10歳の少年がいきなり人の左手斧で掻っ捌けと言われてもね。この隙に雨宮は潮の祭壇に体当たりして重治ともどももんどりうち、慶太も身を挺して綾乃と桃弥、柚希らを守ります。その後、文乃がチェンソーで襲ってきたり、外に出ようとしたら村人総出で襲ってきたりするので、一旦祭壇や座敷牢のある洞窟、仏壇裏、客間とつながっている隠し通路に身を潜めます。ここで東京や埼玉の変な家も実は桃弥を守るためのシェルターだった説の伏線を回収しています。ていうか村人たちは隠し通路のこと誰も知らなかったのか・・・。まあ村人は騙せたとしても片淵本家の人たちは知っているし、何なら隠し通路の奥に現在進行形でいるのでここに隠れていて安心なわけ・・・と思ったら案の定、清次が襲ってきます。清次は「左手供養なんかどうでもよいが、金もらえるから手伝ってるぜ!」と突然のカミングアウトをしたら、後ろからやってきた重治に頭を殴られた挙句、左手を切り落とされます。呆然としながらも外に駆け出した一行は、タイミング良く大型のバンでやってきた喜江に助けられます。遠くには炎上する片淵本家が映っています。
 その後、片淵本家から重治、文乃、清次、そしておそらくは過去の左手供養の犠牲になったであろう人たちの死体が見つかったことが報道されます。慶太は行方不明のままになっています。まだ洗脳が解けていないのか左手供養のことを気にする綾乃に対して喜江は言います。「次の左手供養は私に任せて。」。彼女の目線の先には炊き出しに並ぶホームレスの姿が・・・。
 一方、雨宮はこれまでの経緯を振り返ってある違和感に気がつきます。喜江はどこから自分に襲い掛かったのか、壁を叩くような音はどこから聞こえているのか、と。栗原と一緒に自宅の間取り図を確認すると、ある空間が存在することに気がつきます。その部分の壁紙をはがすとウジ虫が湧いてきて、さらには!!!で、終わりです。
 不動産ミステリーだと思ってみたらまさかの村総出系ホラーだったとは・・・。このジャンルチェンジのせいか、いろいろ整合性が取れなくなってきて結果的にクエスチョンマークがたくさん浮かぶ事態になってしまいました。次の章で残された謎、およびそれに対する私の勝手な解釈を書いていきたいと思います。


残された謎と超私的超解釈(ネタバレ全開要注意!)

謎1:柚希はなぜ雨宮たちに身分を騙ったのか?
柚希は雨宮たちと接触する際に、自分は変な家で殺されたと思われている宮江恭一の妻だと主張します。その後、それがウソで、実は変な家に住んでいた綾乃の妹であると白状しますが、このウソ必要でした?雨宮も変な家のことを知りたいのでどんなつながりでも構わなかったはずです。

私の解釈1:そうしておかないとホラー演出できないやん?

謎2:変な家はなぜ売りに出されたのか?
ことの発端は売りに出された変な家をマネージャーが買うかどうかを検討することになったということです。その段階で綾乃と慶太の家族は片淵本家に連れ戻されているので、売りに出したのは片淵本家の者か洗脳された綾乃と慶太になります。結局それがきっかけで雨宮がネット動画で取り上げてこの騒ぎなので、そもそもなんで売りに出したの?という話です。

私の解釈2:そうしておかないと物語始まらないやん?

謎3:変な家の子供部屋の床にあった無数のひっかき傷は何なのか?
雨宮たちが変な家の子供部屋に入ると、床に無数のひっかき傷があります。この部屋は外部と接しないように内側に配置されていて、二重扉、トイレは備え付けになっているのは先述した通りですが、桃弥は日の光に当ててはいけない、というだけで完全に監禁しなければならないわけではないはずです。普通におもちゃとか与えて普通に育ててよかったのでは?そもそも情が移って連れ出したのでは?

私の解釈3:その方がホラー映画っぽいやん?

謎4:そもそもこの子供部屋を作った必要性ってあるのか?
言い伝えを守るために桃弥を日の光に当てさせない、というだけのためにこの構造の家を作る必要があったんでしょうか?そもそも桃弥の存在を隣近所の人に知られることに何か問題はあるのでしょうか?桃弥を片淵本家に黙って連れ出したのであればわかりますが、桃弥がいなくなったことに気がついていないという表現はなかったので、片淵本家は把握しているはずです。そして、この変な家は子供部屋以外は必要以上に大きな窓があって光が入ってくる構造になっています。桃弥がうっかり出たら危ないと思う(夜だったけど実際に部屋から出て隣人に撮影されています)のですが、なぜこの構造になっているんでしょうか?そもそもこんな家は通常の分譲ではなく注文住宅でしかありえないですよね。綾乃と慶太が自分で建てたというよりは片淵本家の出資があると考えるのが普通なのですが、そうするとまたこの構造の謎が消えなくなってしまいます。

私の解釈4:細けえことはいいんだよ!

謎5:そもそも片淵本家はなぜ綾乃と慶太が桃弥を連れて家を出るのを許したのか?
桃弥は左手供養の行い手として片淵本家にとって非常に重要な存在です。それを直接血も繋がっていない綾乃と慶太に連れて行かせるでしょうか?当然外に出るのでそのときにうっかり日の光に当たってしまうかもしれないし、その後も日の光に当たるリスクは大きくなります。素直に洞窟の座敷牢に閉じ込めておけば良かったと思うのは私だけでしょうか。

私の解釈5:子孫繁栄のためにはやむなし!

謎6:喜江と夫(綾乃、柚希の両親)はなぜ片淵本家を離れて生活していたのか?
そもそも喜江とその夫もどうやって片淵本家を離れられたのかという話です。原作の設定では夫の方が片淵本家の直系らしく、そうなると10歳のときに左手供養をしているはずです。そうすると10歳まで戸籍もなかったのではないかと思われるのですが、その後普通に結婚して家庭を作れるものなのでしょうか?

私の解釈6:子孫繁栄のためにはやむなし!

 他にもいろいろあるのですが、ここまで整合性が取れなくなった要因として、原作のとある設定がごっそりなくなっていることが考えられます。その設定とは、この左手供養は片淵本家と分家との争いがきっかけとなっているという部分です。映画ではこの分家の存在そのものを完全になくしてしまっているため、この一族が黙々と左手供養を続ける形になってしまっています。
 オリジナルのYouTube動画やネット記事では、変な家とそれにまつわる栗原さんの解釈があり、それが真実なのか妄想なのかわからない、どう判断するかを見ている側にゆだねるというのが良かったのですが、これが原作小説の段階で変な家の住人にスポットを当て、それが村社会の因縁から来ているという点でやや蛇足な印象があるのですが、映画ではさらに独自の解釈と編集を加えてしまったところで、よくわからないものになってしまっています。細かい部分を煙に巻いてホラー演出でごまかすといった感じなので、不動産ミステリーを楽しみにしていた人は面食らうかもしれません。それでもそこそこヒットをしているし、雨穴さんの原作にも続編があるとのことで、おそらく映画も続編が作られるのではないかと思われます。続編の方が間取り図も多く出てくるとのことで、不動産ミステリーに回帰してもらえればうれしい限りです。

 ややネタ的になりましたが、一応自分なりの考察でした。真面目な考察系記事をお好みの方は、「落下の解剖学」の方の記事を御覧ください。

sputnik0107.hatenablog.jp

 

大胆なフォーマットチェンジの映画

 上記のように、元がYouTube動画やWeb記事といったものから派生して作られた映画ということで、どうしても無理があったように思います。ここでは、別フォーマット、別メディアで話題となったものの映画化をまとめてみます。

 

スキージャンプ・ペア ~Road to TORINO 2006~」

 真島理一郎のオリジナルCG動画を元に映画化。谷原章介がナビゲーターを務めてドキュメンタリー形式でスキージャンプ・ペアの競技誕生秘話からオリンピック競技として執り行われるまでを描いた異色作です。出演者に船木和喜荻原次晴などの実際のオリンピアンから、アントニオ猪木ガッツ石松まで出演していてなかなか豪華ではありますが、元々がペアでスキージャンプをするシュールなCG動画から派生させただけにやはりいろいろ無理があった感じ。次の記事で「四月になれば彼女は」を書こうと思って川村元気について調べていたら、この作品のことを思い出したので追記でした。

 

 

 

「マダム・マーマレードの異常な謎」
 脱出ゲームを基にした映画。出題編と解答編に分かれていて、出題編の本編終了後に映画館の場内の明かりがつき、そこで映画を観た人が謎解きに答えて、回答を出口のBOXに投函するという形を取っていました。脱出ゲームはTVドラマをはじめマルチフォーマットで展開していた強みもありますが、本作は川口春奈がメインキャストで他にも劇中の短編に杉咲花山本舞香などなかなか豪華キャストで映画としても十分に楽しめる作品になっていました。ちなみに自分は謎は解けませんでした・・・。

 

「劇場版 マーダー★ミステリー 探偵・斑目瑞男の事件簿 鬼灯村伝説 呪いの血
 マーダーミステリーをベースとした映画。元々はTVドラマシリーズとして作られた作品の映画版。
 出演は、劇団ひとり剛力彩芽高橋克典八嶋智人、他。キャストにはキャラクター設定と行動指示のみが与えられてアドリブの芝居で進行していくという形になっていますが、マーダーミステリーというよりは即興劇という印象でした。

 

「ダウト~嘘つきオトコは誰?~」
 同名アプリを原作にした映画。婚活パーティーで知り合った男性10人のうち9人はウソをついており、残る1人が運命の相手であると占い師に言われた主人公が、男たちのウソを見抜こうと奮闘する。文字通りアプリをそのまま映画化したかのような作品で、劇場で「なぜ自分はこの映画を観に来たのか・・・」と自問自答するぐらいの作品でした。永江二朗監督はこの後、「きさらぎ駅」「リゾートバイト」と快作を連発するので、その布石だったと思えば当時の自分を少しは許せそうです。

 

モンスターハンター
 同名ゲームの実写映画化。突如としてモンスターたちのひしめく世界に飛ばされた主人公たちが決死のサバイバルを試みる。ゲーム性もゲームの世界観も何一つ置き去りにした異世界モノになっています。監督はポール・W・S・アンダーソンで、「バイオハザード」シリーズの映画版の監督として有名ですが、「モータル・コンバット」や「デッド・オア・アライブ」の監督も務めており、ゲーム原作の映画化のトップランナーとも言えます。なお作品の出来は・・・。

 

逆転裁判
 同名ゲームの実写映画化。近未来の法廷を舞台に、新米弁護士が難事件の裁判に挑む様を描いています。成宮寛貴斎藤工桐谷美玲など豪華キャストだが、圧倒的コスプレ感が拭えませんでした。近未来設定にすることでゲームのシステムを映画に持ってきてもごまかせると思ったのかもしれませんが、プレイヤーが相手の証言に対して意義を唱えたり証拠品を提示したりを選択していくシステムこそが面白いゲームなので、映画になってしまうとその部分の魅力がなくなってしまう。三池崇史監督は「龍が如く」の実写版の監督もしており、ゲーム原作の映画化のトップランナーとも言えます。なお作品の出来は・・・。

 

 

とまあ、元が人気になると映画化の話はどこからか湧いて出てくるのでしょうね。残念ながら大成功という作品はめったにない印象があります。やはり元々のフォーマットがあってこその作品なのかもしれません。

 

ワンポイント心理学 ~迷信を信じてしまう訳~

 今回は迷信についての心理学です。本作では左手供養の迷信が出てきましたが、そこまで極端なものではないとしても私たちの身の回りには多くの迷信が存在しています。例えば、「夜に爪を切ると親の死に目に会えない」というものがあります。これは本来は夜爪が世詰めという言葉と同じ語呂で、これが短命を意味することから縁起の良くないこととされて、いつしか上記のような迷信となったと言われています。根拠をたどっていくと、昔はそれなりに理屈があったものがいつしか風化していて、内容だけが言わば都市伝説のように残っている場合などもありますが、私たちが日常的にこうした迷信を信じてしまうのは、原因の帰属が得意ではないということが挙げられます。
 例えば、「チョコレートを食べすぎると鼻血が出る」という迷信について考えてみます。チョコレートを大量に食べると血行が良くなる、カフェインやポリフェノールによって血流が良くなるなどという可能性はありますが、医学的に明確な根拠は示されておりません。ですが、ある時チョコレートを食べたときに鼻血が出るという経験をしたら、チョコレートが原因で鼻血が出たと捉えがちです。それに対して、チョコレートを食べたけど鼻血が出なかったという経験をしたとします。このときは当然チョコレートと鼻血の因果関係は示されませんが、それが当たり前過ぎると、私たちはこの出来事自体が記憶からなくなってしまうのです。そうすると記憶に残っている出来事は、「チョコレートをたくさん食べたら鼻血が出た」というもののみになります。こうして経験則として蓄積されていった情報が迷信となって残っていくのです。それがいわくありげなものだったり、もっともらしかったりするとその影響力はなおさら大きくなるので、村の古くからの習慣などはまさに根強い迷信となっていくわけです。