まただいぶ日が空いてしまいましたが、MOVIE OF THE YEAR 2024 外国映画編をお送りします。
ベスト10形式ですが、これまた観たタイミング、評価のタイミングなどでいくらでも変動するものだとは思っております。なので順番自体はあまり気に留めず見ていただくとよろしいかと。
それでは行きましょう!
10位:ぼくとパパ、約束の週末

監督:マルク・ローテムント
出演: フロリアン・ダーヴィト・フィッツ、セシリオ・アンドレセン、アイリン・テツェル、他
自閉症と診断されたジェイソンを愛しつつも手を焼いていた父親ミルコ。あるときクラスメイトから好きなサッカーチームを聞かれたジェイソンは、自分がどのチームを応援するか決めるため、国内56チーム全てのスタジアムに行って、自分の目で見て判断したいと言い出す。ミルコは毎週末にミルコを連れて観戦に行くことを約束するが・・・。
本作の主人公は自閉症(診断名としては自閉症スペクトラム障害)ということで、映画全編を通して、自分のルーティーンを頑なに守る、他人に触れられるのを極端に嫌うなど、日常生活において支障となっている部分が描かれていて、自閉症児を持つ親や家族の気苦労が伝わってきます。ただ、その"こだわり"が、自分の好きなサッカーチームを決めるための父子2人の週末旅行につながっていきます。そしてこれが実話ベースだというのも衝撃でした。
基本は父子のロードムービーといった雰囲気もあるのですが、本作は変に夢物語に昇華しようとせず、自閉症というものを正しく伝えることにウェイトが置かれているというのも好印象です。それでいて、その過程でジェイソン自身も変化していくのが伝わってきてます。
そしてドイツのサッカーチームのスタジアムが多く出てくるので、サッカーファンとしても嬉しいものがあります。家族がそれぞれ応援しているチームが違っていて、両親とも自分がファンのチームの遠征のときだけジェイソンにも色目を使っているあたりもまた微笑ましい作品でした。
自閉症を作品の軸に据えつつもドラマとして、エンターテインメントとして完成度の高い作品だったと思います。自閉症を扱った作品としては、スウェーデンの「シンプル・シモン」もオススメです。
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「ぼくとパパ、約束の週末」 ★★★★★
— purefawn🐾(We shall return) (@purefawn) December 25, 2024
自閉症のジェイソンが、応援するサッカーチームを決めるため、全56チームの試合を現地観戦することにするが・・・。自閉症への理解とその難しさ、親子の絆を描きつつ、ドイツのサッカーチームやスタジアムも楽しめる。これが実話ベースというのも驚き。
9位:フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン

監督:グレッグ・バーランティ
出演:スカーレット・ヨハンソン、チャニング・テイタム、ウディ・ハレルソン、他
アポロ計画がスタートして8年、国民の関心も薄れてきた頃に、PRマーケティングのエキスパートとして、ケリーがNASAに派遣される。彼女の大胆なPR戦略が功を奏し、アポロ11号の月面着陸計画は世界中の注目の的となる。政府関係者のモーは、計画が失敗した場合の"保険"として、ケリーにフェイク映像を作成するように命じるが・・・。
この嘘かホントか分からないラインの設定がまず見事で、それだけでも十分に面白い作品。
主演のスカーレット・ヨハンソンがいかにもなPRマーケターだし、対するチャニング・テイタムも堅物なNASAのスタッフというキャラクターが対照的になっています。
それでいて宇宙開発においてロシアに一歩先を行かれたアメリカの焦りなんかも垣間見えて少しシニカルなスパイスを加えつつも基本はコメディーベースになっているというのも作品に入りやすくなっています。
スカーレット・ヨハンソンの60年代ファッションを始め、当時の美術も見どころです。
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「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」 ★★★★★
— purefawn🐾(We shall return) (@purefawn) August 30, 2024
アポロ計画のPRを任されたケリーは、責任者のコールと衝突しつつも着々とPRを推進していた。しかし政府より失敗したときのためのフェイク映像を用意するように言われ・・・。設定で十分に面白いが当時の世相やファッションも相まってキャストが魅力的。
8位:フォールガイ

監督:デヴィッド・リーチ
出演:ライアン・ゴズリング、エミリー・ブラント、ウィンストン・デューク、アーロン・テイラー=ジョンソン、他
撮影中のケガでスタントマンを引退していたコルトだったが、元カノのジョディの監督デビュー作でオファーを受けてスタントマンに復帰することになる。ところが映画の主演俳優のトムが行方不明になっていたため撮影はストップしていた。ジョディの頼みもあってコルトはトムの捜索に乗り出すことになるが・・・。
一人のスタントマンが失踪した主演俳優の捜索の過程で、ハリウッドの陰謀に巻き込まれていくという構成になっていて、物語の主たる軸がミステリーのようになっているのがまず意外で驚きでした。それでいて合間合間にド派手なアクションシーンもしっかり盛り込まれているのでよりエンターテインメント性の高い作品になっていると言えます。
また主人公がスタントマンという設定自体がうまく伏線にもなっていて、気楽に観られる作品でその実は深みもあるという点で良くできています。
小ネタやエピソード1つとっても面白く、個人的には主人公が元カノとシーンの打ち合わせをしていると見せかけて当時の色恋沙汰の話をしているところなんかは大ヒットでした。
今回挙げた10本の中で万人にオススメできるという点では本作が一番かもしれません。
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「フォールガイ」 ★★★★★
— purefawn🐾(We shall return) (@purefawn) September 14, 2024
自らスタントマン出身で「ブレット・トレイン」のデヴィッド・リーチ監督が、スタントマンが失踪した主演俳優の捜索をするうちに大きな陰謀に巻き込まれていく。スタントマンと主演俳優という関係性を巧みに取り入れた構成が技巧的。アクションも見せ場たっぷりで痛快!
7位:落下の解剖学

監督:ジュスティーヌ・トリエ
出演:ザンドラ・ヒュラー、スワン・アルロー、ミロ・マシャド・グラネール、他
フランスの雪深い人里離れた山荘で一人の男性の死体が発見される。発見したのは視覚障がいのある息子ダニエルだった。当初は事故死と思われていたが、不自然な点が見つかり始め、ついには妻でベストセラー作家のサンドラが容疑者として起訴されるが・・・。
カンヌ映画祭でパルム・ドール(最高賞)を受賞し、アカデミー賞作品賞にもノミネートされて話題になりました。
雪深い山荘でインタビューを受ける女性、その背後ではなぜか爆音で音楽が流れている・・・。なんとも意味ありげな冒頭からほどなく一人の男性の死体が見つかるという導入からして素晴らしかったです。
その後は事件の現場検証と起訴された妻サンドラの法廷でのやり取りが中心になるのですが、この裁判の過程で徐々に事実が明らかになっていく展開が観ているものを引き込みます。このあたり主演のサンドラの演技は各方面で絶賛されていて言わずもがななのですが、息子役のダニエル、そしてパルムドックを受賞した愛犬スパークの演技も見どころです。
それでいて家族のドラマ、人間の選択のドラマにうまく落とし込んでいるのも見事でした。鑑賞した直後よりもその後いろいろ咀嚼して考えて評価が高まっていったタイプの作品です。考察系映画が好きな方にはオススメです。
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「落下の解剖学」 ★★★★
— purefawn🐾(We shall return) (@purefawn) March 17, 2024
カンヌ映画祭パルム・ドール受賞作。父親の不可解な転落死の容疑者となった母親の裁判を描く。裁判を通じて夫婦の関係性や妻の趣味嗜好などが明らかになり、現場にいた唯一の証人が盲目の息子というのが二転三転する裁判に拍車をかけるという展開が素晴らしい。
6位:エイリアン ロムルス

監督:フェデ・アルバレス
出演:ケイリー・スピーニー、デヴィッド・ジョンソン、アーチー・ルノー、イザベラ・メルセド、他
孤児のレインは弟のアンディとともに重労働に明け暮れる日々で未来に希望を見出せずにいた。ある日、かつての恋人タイラーからある計画に誘われ、宇宙ステーション・ロムルスに向かう。しかしそこで待ち受けていたのは人間の体内で異常な速さで成長し進化するエイリアンだった・・・。
SFホラーの金字塔「エイリアン」の最新作。時系列的にはシリーズの1と2の間に位置づけられています。本作の監督フェデ・アルバレスと言えば「ドント・ブリーズ」が話題作ですが、本作でも若者の無軌道さによって未曾有の恐怖に巻き込まれるという設定が共通しています。
しかし本筋はしっかり「エイリアン」で、宇宙船内でのサバイバルホラーという様相はまさに「1」のそれですし、「エイリアン」ファンならば嬉しいあのキャラも登場します。そして終盤はアクション要素も強くなっていって、これは「2」を彷彿とさせます。
しっかりオマージュを捧げつつも、アンドロイドの設定や扱いが現代風になっていて、必要なところはしっかりアップグレードされている印象でした。
こういう作品はどうしても後付け感が強くなって乗り切れないことが多いのですが、本作は偉大すぎるシリーズの冠に恥じないクオリティーの作品になっていると思います。
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「エイリアン:ロムルス」 ★★★★★
— purefawn🐾(We shall return) (@purefawn) September 30, 2024
人気SF映画「エイリアン」の最新作。監督は「ドント・ブリーズ」のフェデ・アルバレス。レインは別の惑星への移住のため弟のアンディとある計画に乗るが・・・。過去作へのオマージュもありながら新要素も取り入れ、エンタメ性も非常に高い作品になっている。
5位:破墓/パミョ

監督:チャン・ジェヒョン
出演:チェ・ミンシク、キム・ゴウン、ユ・ヘジン、イ・ドヒョン
風水師のサンドクと葬儀屋のヨングンは墓の改葬を生業としていた。ある日、墓の改葬の依頼主から、家族が代々謎の病気に悩まされていることを聞いた2人は、韓国のシャーマン"巫堂(ムーダン)"のファリムとその弟子ポンギルに要請し、改葬とお祓いを同時に行うことにするが、掘り出した墓には想像を絶する因縁があり・・・。
ポン・ジュノ監督の「パラサイト/半地下の家族」が世界的に注目されてこともありますが、それよりも前に韓国ホラーが世を席巻したことがありまして、アン・ヒョンギ監督の「ボイス」や「コックリさん」なんかが代表だったのですが、その流れを組んでナ・ホンジン監督の「哭声/コクソン」が出色の出来でした。田舎の村で起きた一家惨殺事件の背景に、キリスト教、祈祷、都市伝説が絶妙に絡み合った快作なのですが、本作はそこにさらに風水やイタコの要素も加わって、かつエンターテインメント性も高まっているのだから、これはもう韓国ホラー界のアベンジャーズと言われても過言ではありません。
まず何と言っても改葬とお祓いの儀式がたまりませんよね。
風水、祈祷の合わせ技でこのシーンを見るだけでも本作を見る甲斐があります。
終盤にかけて日本統治時代の都市伝説も相まって、さらにはだいぶトンデモ展開にはなっていきますがそこは御愛嬌。「破墓/パミョ」を見に行くことを「パミョる」と表現することすら流行ると信じて疑わなかった自分ですが、残念ながらそこまで話題にはならなかったようで、観ていない方も多いかと思われますので、ぜひご覧ください。この文章書きながら公式ページも見てみたんですが、小ネタや様々な解説も充実しているので、鑑賞後にはぜひ公式ページも見てみてください。
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「破墓/パミョ」 ★★★★★
— purefawn🐾(We shall return) (@purefawn) November 29, 2024
「サバハ」のチャン・ジェヒョン監督によるスリラー。呪いを解くため先祖の墓の改葬に携わる者たちの姿を描く。韓国独自のシャーマニズムに風水、イタコ、都市伝説が総出で繰り広げられるまさにホラー・エンターテインメントの極地!パミョる動詞化まったなし!(ならない)
4位:ロボット・ドリームズ

監督:パブロ・ベルヘル
ニューヨークのマンハッタンで孤独に暮らすドッグ。あるときテレビのCMで友だちロボットのことを知り、早速購入する。それ以来、どこへ行くにもロボットと一緒のドッグはこれまでにはない幸せな日々を過ごしていた。夏の終わり、ドッグはロボットとビーチで海水浴を楽しむが、ロボットが錆びて動けなくなってしまい、ビーチもシーズンオフで閉鎖されてしまう・・・。
スペインのパブロ・ベルヘル監督による初のアニメーション映画。
元々がグラフィック・ノベルだったとのことで、優しい線画のような印象を受けるのはオリジナルの影響でしょう。また、この世界では人間は全て動物化されているので、どんな場面でもどことなくユーモラスさを感じさせます。
ただその絵柄とは対象的に設定が実にリアルで、主人公のドッグは都会で生活しながらも孤独で、電気もつけていない部屋でなんとなくテレビを見ながらいつもの冷凍食品をチンして食べるだけの日々が映し出されます。
そんなドッグの転機となるのが、CMで見た友だちロボット。
ロボットを購入してからドッグの生活は180度変換し、自宅にこもりっきりの生活から、外へ出て人生を謳歌し始めます。ロボットと一緒に。
しかしそんな幸せの日々も、夏の終わりの海水浴で、ロボットが錆びて動けなくなってしまい、やむを得ずビーチに置き去りにしてしまったことで終わりを告げます。
ここからはロボットがドッグの元に再び戻って楽しい生活を取り戻す、という夢(まさにロボット・ドリームズ)がリフレインされていきます。本来ロボットは夢を見ない存在ではあるのですが、本作のロボットにそうした感情が芽生えていることを示しているのかもしれません。ロボットは人間以上に感情豊かでありながらもロボットなので表情は変わらないというのもなんだか切ないです。
このように、動物とロボットに置き換えていはいますが、孤独、友情、別れなど人ならば誰もが経験するであろうライフイベントを巧みに描いているのが本作の優れている点でしょう。セリフもナレーションもありませんがそれを感じさせないレベルでメッセージ性のある普遍の物語になっています。
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「ロボット・ドリームズ」 ★★★★★
— purefawn🐾(We shall return) (@purefawn) December 19, 2024
パブロ・ベルヘル監督初の長編アニメ映画。80年代のNYを舞台に、孤独な犬と友だちロボットの日々を描く。全編セリフなしの作品だが、シンプルな絵柄と独特やキャラクターは語るよりも雄弁に感情を訴えてきて、観ているもののイマジネーションを駆り立てる傑作。
3位:哀れなるものたち

監督:ヨルゴス・ランティモス
出演:エマ・ストーン、マーク・ラファロ、ウィレム・デフォー、ラミー・ユセフ、他
偏屈だが天才的な外科医ゴドウィン・バクスターは、若い女性ベラの死体に赤ん坊の脳を移植して蘇生させる。ベラは急速に成長していき次第に自我に目覚めていく。そしてある日、弁護士のダンカンとともに未知なる世界を求めて旅立っていくが・・・。
アラスター・グレイの同名小説を「女王陛下のお気に入り」のヨルゴス・ランティモス監督により映画化された本作ですが、アカデミー賞では主演女優賞、美術賞、衣装デザイン賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞の4部門を受賞しています。
まず目を引くのは独特な世界観を演出するのに一役買っている美術でしょう。
現代とも過去とも、現実ともファンタジーともとれないような世界観になっていて、それだけで観るものの目を釘付けにします。
その世界観以上にぶっ飛んでいるのが設定と物語で、自殺を図った妊婦の胎児の脳をその妊婦に移植して蘇生させた存在がベラで、言わば体は大人、頭脳は子どもの逆コナン状態になっています。その彼女は普通の人の何倍もの速さで成長していくのですが、好奇心、性への目覚め、そして自我の目覚めとともに、内から外へ、外界へと目を向けてまだ見ぬ世界へと足を運ぶことになります。それでいて子ども特有のピュアさ、イノセンスさみたいなものも持ち合わせているのですが、その何とも難しいキャラをエマ・ストーンが完璧に演じきっていて、彼女を観るだけでも十分に価値のある作品です。
原作ではさらに女性の社会進出の問題、医療現場の問題なども描いていて、深みでいくと映画以上なのですが、映画は映画としてよくまとまっているし限られた上映時間の中でうまく収めた印象もあるので、これはこれとして評価できる作品です。原作はそれぞれの人物の手記という形で書かれているのも面白いので、映画をご覧になった方にはぜひ原作も読んでいただきたいところです。
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「哀れなるものたち」 ★★★★
— purefawn🐾(We shall return) (@purefawn) March 1, 2024
「ロブスター」「聖なる鹿殺し」のヨルゴス・ランティモス監督の異色ドラマ。自死した母親の体に赤ちゃんの脳を移植させて生まれたベラの成長と冒険を描く。性描写の話題が先行している部分もあるが、ビジュアルや音楽、主演のエマ・ストーンの熱演ぶりが素晴らしい。
2位:花嫁はどこへ?

監督:キラン・ラオ
出演:ニターンシー・ゴーエル 、プラティバー・ランター、スパルシュ・シュリーワースタウ、他
結婚式を終えた花婿のディーパクは、地元に帰るために乗っていた電車を降りる際に、別の花嫁と取り違えてしまう。間違えて連れてこられてしまった女性はジャヤという名前で、なにか訳ありの雰囲気が気になりながらも身元が分かるまでディーパクの家で預かることになる。一方、ディーパクの本当の花嫁プールは、ディーパクの住所も連絡先も分からず、降りた駅で途方に暮れていたのだが・・・。
インド映画もまた「ムトゥ 踊るマハラジャ」などの歌って踊っての長尺コテコテエンタメの時代、「きっと、うまくいく」のようなドラマ性の高い作品、そして一大旋風となった「RRR」のようなド派手エンタメ作品と、バジェットもスケールもインドらしい進化を遂げている印象ですが、本作はそんな流れとは別に、インドの社会世相を映し出す作品になっています。
インドでは結婚の際には女性側の家が嫁入り道具として高価な金品や自動車などを嫁に持たせて、結婚式などの費用も女性側の家が持つのが当たり前という社会です(現代だと都市部などではそのような風習はなくなっているかもしれませんが)。
そんな中、結婚式を終えて地元へ帰るディーパクは、自分の花嫁を取り違えてしまうのですが、花嫁はみんなベールを被っていて顔が見えず、さらには流行りなのか、それしかないのか、ベールの色やデザインまでそっくりなので、ディーパクが悪いとは一概に言えません。かくして取り違えられてしまった2人の花嫁、ジャヤとプールですが、この2人が実に対照的。ジャヤはそもそも結婚に前向きではなく独り立ちしたいと考えているのに対し、ディーパクの本当の花嫁のプールは、箱入り娘的なキャラクターでディーパクと結婚することに何の疑問を抱くでもなく、言ってしまえばこれまでのインドの女性のステレオタイプといったところでしょうか。この2人がそれぞれの状況で変化していく様が、コミカルかつもドラマチックに描かれているのが本作の魅力となっています。
最後にXでも書きましたし1つネタバレになってしまのですが言わせてください。
「お前がカッコいいのかよ!!!」
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「花嫁はどこへ?」 ★★★★★
— purefawn🐾(We shall return) (@purefawn) December 4, 2024
インドの田舎で花婿の家に向かう電車で取り違えられてしまった2人の花嫁の姿を描く。ベースはコメディーながら2人の花嫁を対照性で男尊女卑が色濃く残るインドとそこからの変化を巧みに描いている傑作。微ネタバレですが言わせてください。「お前がカッコいいのかよ!」
1位:ソウルメイト

監督:ミン・ヨングン
出演:キム・ダミ、チョン・ソニ、ピョン・ウソク、チャン・ヘジン、他
ソウルから済州島に引っ越してきたミソは、小学校の転校初日から学校を抜け出す。そんな自由奔放な姿に惹かれたハウンは彼女を追いかけていく。この1件で親友となった二人は、性格や考え方、価値観、育ってきた環境は正反対だったが、唯一、絵を描くことが好きというのが共通していた。中学、高校とずっと一緒だった二人だが、ハウンにジヌという恋人ができ、ミソもソウルに行くことを決め・・・。
2016年の中国映画「ソウルメイト/七月と安生」の韓国リメイク作。
済州島、ソウルを舞台に、2人の少女/女性の友情を描いた作品です。
前半は2人の少女ミソとハウンのジュヴナイル友情モノとなっています。
この2人が実に対照的で、ミソは家庭環境に恵まれず半ば厄介払いの形で済州島に引っ越してきます。性格は自由奔放で、周りの目など気にせず我が道を行くタイプです。一方のハウンは両親に愛されて育ち、優しい性格ながらも引っ込み思案なところがあります。
この正反対な二人がお互いをうまく補完しつつ、自分とは違うところに憧れつつといった関係性でいるのがなんとも微笑ましいです。
この関係が、ハウンに恋人ができることで微妙に変化していきます。
この頃と前後してミソも済州島を離れソウルに行くことを決めます。
ハウンは地元の大学に通い、教師になって地元で働くという現実的で無難な生き方をしようとするのに対し、ミソは世界中を旅して回りたいという夢を実現する生き方をしようとしているのもまた対照的で、両者がお互いが目の前にはいないことでより相手への憧れが増幅しているような印象になっています。
その後のハウンとミソはどうなるのか、という展開でドラマが進行していき、この2人の関わり方、シンクロニシティが観ているものを物語に引き込んでくれます。
元ネタの「ソウルメイト/七月と安生」もあわせて鑑賞しましたが、本作の方が主演2人のキャストの瑞々しさ、そして絵画を中心的なモチーフにしたことで、映画的要素も膨らんだように思いますので、素晴らしいリメイクだったのではないでしょうか。
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「ソウルメイト」 ★★★★★
— purefawn🐾(We shall return) (@purefawn) April 7, 2024
中国映画「ソウルメイト/七月と安生」の韓国リメイク版。済州島を舞台に、2人の少女の成長とすれ違いを描く。編集がややごちゃついているが、2人の少女のキャラクターの造形やキャストも素晴らしく、女同士の友情モノ、青春モノとして非常に高いクオリティーの作品。
以上、ベスト10として10本ピックアップしましたが、惜しくも選外となった作品について、2024年の総評とともに以下に記載します。
2024年は韓国映画の勢いが凄かった印象です。ベスト10内の2本はもちろんですが、 イ・ビョンホン主演の「コンクリート・ユートピア」は、奇跡的に大災害から逃れた1棟のマンションを舞台に繰り広げられるサバイバル・サスペンスとなっていて、災害という特異な状況における人間関係の変容の恐ろしさを描いています。
「破墓/パミョ」にも出演しているユ・ヘジン主演の「マイ・スイート・ハニー」では冴えない中年男がシングルマザーと恋に落ちるラブコメディですが、いかにも映画的なロマンチックさとは一線を画す作りでそれがかえって印象的でした。
ポン・ジュノ監督の助監督だったユ・ジェソンの長編デビュー作の「スリープ」は、夫の夢遊病のような症状を皮切りに次々と起こる恐怖を描いています。
「密輸1970」は、1970年代の韓国を舞台に、巨額の密輸ビジネスに一役買ったのがなんと海女さんたち!という衝撃の設定のクライム・サスペンスとなっていました。
いずれも奇想天外な設定というのが共通点でしょうか。ちなみに2024年の韓国映画ではおそらく一二を争うであろう「ソウルの春」は見逃してしまっているのですが、それでもこの品揃えです。
ここ数年のアカデミー賞関連の作品もクオリティーの高い作品が揃っています。
「パストライブス/再会」は韓国系の男女の恋の行方を少年期、青年期、大人と12年ごとに描いているのですが、構図や導線などの使い方がすばらしく、映像で表現することの利点を活かしきった技巧的な作品だったと思います。
「サイドウェイ」のアレクサンダー・ペイン監督、ポール・ジアマッティ主演で贈る「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリデイ」は、全寮制の男子高校で、当直の教師と料理長の女性職員、そして家庭の事情で学校に残ることになった男子生徒の3者3様の姿と交流を描いています。
「関心領域」は、アウシュヴィッツ強制収容所の隣にある所長家族の暮らしを描き、漏れ聞こえてくる音声のみでホロコーストを表現した異色作となっています。
ドキュメンタリー映画では、北朝鮮からの脱出、いわゆる"脱北"を試みる家族とそのエージェントに密着した「ビヨンド・ユートピア 脱北」が衝撃でした。
ロシア軍が眼前に迫ってきているウクライナのマリウポリの緊迫する状況を映し出した「マリウポリの20日間」は、アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を受賞している問題作です。
「私は憎まない」では、ガザ地区出身でイスラエルで医師をするアブラエーシュ博士とその家族を捉えています。いずれも政治色・国際問題を捉えた作品で、撮影機材の小型化、今やスマートフォンですら撮影可能になったということで、ドキュメンタリーの幅も格段に広がったのではないでしょうか。
一方、日系人ピアニスト・フジコ・ヘミングの晩年を映し出した「恋するピアニスト フジコ・ヘミング」は音楽はもちろんのこと彼女自身の生き方にもクローズアップしていました。
大作の続編・関連作もまた好調でした。
「マッドマックス:フュリオサ」では、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」でシャリーズ・セロンが演じたフュリオサ役にアニャ・テイラー=ジョイが扮し、フュリオサの出生から壮絶なサバイバルを経て愛するものを奪われた復讐に身を焦がしていく姿を描いていて、シリーズあの世界観も健在でした。
「バッドボーイズ RIDE OR DIE」はウィル・スミスとマーティン・ローレンスの2人の型破りな刑事を主人公とするシリーズの第4弾ですが、バディ・アクションとしてだけでなく家族や友情のドラマとして一皮むけた印象があります。
ティム・バートン監督が自身の出世作(出世前作?)「ビートルジュース」の36年ぶりとなる続編を映画化した「ビートルジュース ビートルジュース」は、すっかり大人になったリディアが娘のアストリッドを救うために、禁断のビートルジュースを呼び出すという当時の悪ノリそのまま、いやむしろ倍増しているかのような悪趣味エンターテインメントな作品に仕上がっています。
トム・ハーディ扮するエディが地球外生命体に寄生されヴェノムとして暗躍する姿を描いた「ヴェノム」シリーズの第3弾、「ヴェノム:ザ・ラスト・ダンス」は世界から追われる身となったエディたちの運命を描いていて、これまで以上に数多くの地球外生命体"シンビオート"が登場するのも嬉しいですが、VFXアクションはもちろんのこと感動的な要素もある作品になっています。
こちらも前作より24年ぶりとなる「グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声」では、ローマ帝国に村を滅ぼされ家族を殺され、自身も奴隷となった男が剣闘士"グラディエーター"として戦い抜き、壮絶な復讐へと身を投じる姿を描いています。
名匠の新作もいくつか。ウディ・アレン監督の新作「サン・セバスチャンへ、ようこそ」はサン・セバスチャン映画祭の開催地で、映画関係者の妻に同行した主人公の独りよがりな恋模様を描いています。
アキ・カウリスマキ監督の新作「枯れ葉」は、孤独なアル中の労働者の男が、スーパーをクビになった女性と恋におちる様を描いていて、監督らしい独特のオフビートな雰囲気にあふれています。
マイケル・マン監督の新作「フェラーリ」は、フェラーリの創始者エンツォ・フェラーリの知られざるエピソードを描いています。
アニメ作品は個人的には低調だった気がします。
しいて上げるなら「インサイド・ヘッド2」でしょうか。前作からちょっと大人になったライリーの脳内のそれぞれの感情たちの巻き起こす騒動を描いていて、大傑作だった前作の良いテイストを残しつつしっかりとした続編になっている印象でした。
ホラー界では、落ち目の司会者が起死回生を狙って企画したのが生放送番組に悪魔を召喚するという「悪魔と夜ふかし」はなかなかのインパクトでした。黒ゲロも吐きます。
ホラー映画製造工場とでも言わんばかりにちょっと手を変えちょっと品を変えな新作をリリースし続けるブラムハウス作品では、少女が自分のイマジナリーフレンドによって引き込まれる恐怖を描いた「イマジナリー」が好印象でした。
異色作・問題作では、まずはリュック・ベッソン監督の「DOGMAN ドッグマン」。犬と心を通わせることができるという女装男ダグラスの壮絶な生い立ちを描いています。主演のケイレブ・ランドリー・ジョーンズが「ニトラム/NITRAM」に続いて圧巻です。
山田太一の小説「異人たちとの夏」を舞台をイギリスに置き換えた「異人たち」では主人公の孤独と家族への思いが生んだドラマを映し出しています。
トッド・ヘインズ監督の「メイ・ディセンバー ゆれる真実」は、実際の事件をヒントに、少年相手に不貞行為をした後にその少年と結婚したことで物議を醸した女性グレイシーと、彼女を題材とした映画に主演することになり、自らグレイシーに密着取材をする女優のエリザベスの姿を描いています。ジュリアン・ムーアとナタリー・ポートマンの演技合戦が見応え十分です。
「エクス・マキナ」「MEN 同じ顔の男たち」のアレックス・ガーランド監督による「シビル・ウォー アメリカ最後の日」ではアメリカが2つに分断され各地で市街戦が繰り広げられている様子を捉えようと奮闘するカメラマンたちのクルーを描いていますが、臨場感や緊迫感もさることながら、誰が味方で誰が敵かもわからないような環境に放り込まれる恐怖が全面に現れています。
「動物界」は動物に変異してしまう謎の病気が蔓延したフランスを舞台に、"新生物"として隔離されてしまった妻を探す主人公と、彼の息子で動物化の兆候が現れ始めた息子の姿を描いた異色サスペンスになっています。
この項の最後にドイツのファイト・ヘルマー監督がジョージアのロープウェイの添乗員をしている2人の女性の交流を主要なセリフを排して描いた「ゴンドラ」を上げておきます。
最後に、新時代を感じさせる作品群としては、「ヨーロッパ新世紀」では、ルーマニアの田舎町を舞台に、移民問題を複雑な入れ子構造で描いていて、ルーマニア語、ハンガリー語、フランス語、ドイツ語、英語が飛び交う多言語映画(字幕も色分けされていました)というのも現代的な作品でした。
「ありふれた教室」では、正義感あふれる新任教師が学校内での盗難事件を独自に調査し始めたことで巻き起こる騒動を描いています。教育現場の問題、個人情報やプライバシーの問題などが色濃く映し出されています。
「ふたごのユーとミー 忘れられない夏」は、幼い頃から何でもシェアしてきた双子のユーとミーが、初めてシェアできない"初恋"に戸惑う姿を描いたタイ映画です。主演の ティティヤー・ジラポーンシンが一人二役で双子を演じ分けているのも話題になりました。
「#スージー・サーチ」は、ポッドキャストで未解決事件の推理・考察をするも全く人気のなかったスージーが、人気者のクラスメイトの失踪事件を解決してしまったことで一気に話題になる・・・といういかにも現代的なテーマをうまく取り込んだミステリーになっています。
「スラムドッグ$ミリオネア」などの出演で知られるデヴ・パテルか初監督&主演をこなした「モンキーマン」は地下格闘技で日銭を稼ぐ主人公の復讐劇を描いていますが、初監督作とは思えないほどの壮絶で完成度の高いアクションになっています。
最後に、パキスタン映画「ジョイランド わたしの願い」を紹介します。パキスタンの地方都市の大家族でバックダンサーの仕事に就いたことを言えずにいる夫のハイダルと、ハイダルが就職したことで生きがいのメイクの仕事を辞めるように家族から言われる妻のムムターズを中心に、依然として残る家父長制の問題と、そんな社会で描かれる多様性の芽生えはまさに新時代を迎えようとしている分水嶺となっているのではないでしょうか?
以上、MOVIE OF THE YEAR 2024 外国映画編でした。
更新頻度激減してしまいましたが、またポツポツ更新をしていく予定でおりますので、今後ともよろしくお願いします。